Hiroshima University Masters

広島大学マスターズ

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広島大学の新たな教養教育「平和科目」へ参加

  広島大学では平成22年度から第2期中期計画を開始しています。その大きな柱に教養教育の充実がうたわれ、新たに平和科目(選択必修2単位)が加わりました。来年度東広島、広島市東千田両キャンパスでは25科目の「平和科目」群が開講され、まず一年生2500人がその中の1科目を受講します。この科目群に広島大学マスターズと昨年8月に設立された広島大学マスターズ広島は、それぞれ前・後期1科目ずつ、計4科目授業を担当します。
 4科目は、「平和と人間」を統一名称とし、その後にA、B、C、D をつけて、科目区分を行いました。「平和と人間A」(前期)と「平和と人間B」(後期)は広大マスターズが担当し、東広島キャンパスで開講します。開講時間は月曜日12時限です。
 定年退職した大学OB(主に名誉教授)が組織的に大学の正規授業に参画してゆくということは全国に例を見ない、きわめて画期的な実験です。その意味で是が非でも成功させる必要があります。
 つとに浅原学長は広大学生に対する平和教育の必要を痛感され、平和科目の前身の企画として、学長の宿題「平和モニュメント見学とレポート」を学生たちに課してきました。3年間全部で5000本あまりのレポートがよせられました。今回の平和科目はこの宿題をカリキュラムに発展させるものです。広大の学生が国内外に留学し、「平和」が問われたとき、きちんとなぜ私たちが「平和」を求めるのか、科学的データに基づいて話すことが出来る。広大で学んだ留学生たちが「ヒロシマ」を客観的データに基づいて学習する、そのような授業となることを願っています。
 私たちの「平和と人間」について、前期は自然系にウェイトをおき、人類が生存を維持するためにどのような物質的問題に直面し、それを解決してゆこうとしているのかを問い、後期は文化系にウェイトをおき、平和を実現するために精神、心の連帯をどう築いてゆくべきかを考えたいと思います。以下、広島大学教養教育本部に提出している全体シラバスを再録します(授業概要一部省略)。

 

平和と人間A(前期)−環境と生物の未来へ−

 <授業概要>
 1)私たちの原点は、人類最初の原爆投下によって都市壊滅した広島にある。だが平和を求める心は人類に共通し、普遍的である。
 2)産業革命によって、生産と消費、労働と生活、伝統と文化のシステムが大きく変化し、私たちは国家=国民の枠の中に組み込まれる。今から200年以上前、「神なき時代の最初の哲学者」とよばれるカントは、平和は人間が自ら創設されるものと説いた。
 広島投下の原子爆弾とは何であったか。そこに生きた者の視点から被爆の実相と都市の破壊を考え、原子爆弾の構造、その威力等を知り、その後の核兵器の歴史と現実を考える。
 現代の世界平和は、戦争回避だけではない。人口増加、物質の偏在、食糧の不足、環境の劣化の諸困難にいかに立ち向かうか。環境破壊の克服、新エネルギーの模索、バイオテクノロジー、感染と危機の管理、真の意味での生物多様性の社会を考える。
 3)「平和」を国際的レベルにおける共同意志にどう高めてゆくか、それを考えてゆきたい。

 <講義目次>
 第1講 ガイダンス 授業の狙い、講師紹介(金田晉・元総合科学部)
 第2講 平和と哲学−カントと平和の哲学(金田晉・元総合科学部)
 第3講 広島投下の原子爆弾の威力とその後の核兵器の開発(松田正典・元総合科学部)
 第4講 広島で被爆して平和を考える(植木研介・元文学研究科)
 第5講 近代産業と平和英国資本主義とクェイカー教徒(友田卓爾・元総合科学部)
 第6講 地球環境の変貌(安藤忠男・元生物圏科学研究科)
 第7講 30年後の地球環境(安藤忠男・元生物圏科学研究科)
 第8講 生物多様性(山本義雄・元生物圏科学研究科)
 第9講 石油代替エネルギーと環境(鈴木寛一・元生物圏科学研究科)
 第10講 水産資源の国際問題(中川平介・元生物圏科学研究科)
 第11講 バイオテクノロジーの歴史と最新技術(平田敏文・元理学研究科)
 第12講 次世代のバイオテクノロジー(平田敏文・元理学研究科)
 第13講 感染症と危機管理(松田治男・元生物圏科学研究科)
 第14講 平和と国際経済学(佐野進策・元経済学部)
 第15講 平和の哲学現代の諸問題と哲学の視点(金田晉・元総合科学部)
 第16講 試験

 

平和と人間B(後期)−人間と文化の未来へ−

 <授業概要>
 1)<略>
 2)戦争は国家の論理が優先する。その下で、人びとは自らの生き方を問い、相手国に住んでその苦難を経験し、なお平和の生活を望んだ。また芸術やスポーツを介して国境を超えて人びとの連帯をもとめてきた。
 3)平和は人間が自ら創設してゆかなければならない(イマヌエル・カント)。「平和」を国際的レベルにおける共同意志にどう高めてゆくか、それを考えてゆきたい。

 <講義目次>
 第1講 ガイダンス、授業の狙い、講師紹介(金田晉・元総合科学部)
 第2講 平和と哲学−カントと平和の哲学(金田晉・元総合科学部)
 第3講 広島投下の原子爆弾の威力とその後の核兵器の開発(松田正典・元総合科学部)
 第4講 広島で被爆して平和を考える(植木研介・元文学研究科)
 第5講 近代産業と平和英国資本主義とクェイカー教徒−(友田卓爾・元総合科学部)
 第6講 環境から見た人類の生長とその限界(安藤忠男・元生物圏科学研究科)
 第7講 バイオテクノロジーと食の安全(池上晋・元生物圏科学研究科)
 第8講 バイオテクノロジーと生物多様性(池上晋・元生物圏科学研究科)
 第9講 戦争と倫理(水田英実・元文学研究科)
 第10講 戦争と人間比治山に眠るフランス兵士の墓(原野昇・元文学研究科)
 第11講 戦争と人間広島のアメリカ移民の歴史(山代宏道・元文学研究科)
 第12講 平和と美術(難波平人・元教育学研究科)
 第13講 平和とスポーツ祭典とオリンピック(渡部和彦・元教育学研究科)
 第14講 平和と国際経済学(佐野進策・元経済学部)
 第15講 平和の哲学現代の諸問題と哲学の視点(金田晉・元総合科学部)
 第16講 試験